レビー小体型認知症スマイルニュースhttps://dlbsn.orgレビー小体型認知症に関する情報を発信しています。Sun, 13 Jul 2025 14:55:17 +0000jahourly1https://dlbsn.org/wp-content/uploads/cropped-logo_dlbsn-32x32.pngレビー小体型認知症スマイルニュースhttps://dlbsn.org3232 報告:愛知の活動-講演について解説3https://dlbsn.org/group/aichi/report/report20250523_3.htmlSun, 13 Jul 2025 14:01:47 +0000https://dlbsn.org/?p=4117

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Le ... ]]>

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)」に関する基礎知識を、筆者が講演した時に用いたスライドに沿って解説します。全部で10回ぐらいの連載になるかと思います。

(文責:鵜飼克行、レビー小体型認知症サポートネットワーク愛知〔DLBSN愛知〕顧問医、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

報告:第3回

スライドの全ページを見る(2025年5月23日 愛知・交流会報告)

ー7枚目解説ー

鵜飼先生
鵜飼先生

前回は6枚目までを解説しました。7枚目から解説します。

 中脳の黒質という神経細胞が密集している領域(神経核、または単に「核」とも呼びます)の顕微鏡写真です。

 中央向かってやや左寄りの三角形様の構造物が神経細胞(ニューロンとも呼ばれます)です。

 そのさらに左側のソーセージのような構造物は毛細血管です。血管内に赤血球が積み重なって見えています。神経細胞内の黒茶色の細かい粒粒はメラニンで、このために黒質は肉眼では黒く見えます。

 神経細胞の中のハロー(光輪)に囲まれたピンク色の球体がレビー小体です。よく見ると、大きなレビー小体の上方にも小さなレビー小体があるようで、雪だるまみたいになっていますね。

 レビー小体に圧迫されて、本来は中央にあるはずの神経細胞の核(※1)が、右側に潰されています。

鵜飼先生
鵜飼先生

※1:この場合の「核」は、神経細胞の密集域〔神経核〕のことではなく、神経細胞内にある「『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじ」の目玉のような構造物のことです。

ー8枚目解説ー

 スライド左側の顕微鏡写真には、大脳皮質という領域にある神経細胞が写っています。

 中央やや左寄りの丸い構造物が神経細胞です。その神経細胞の中の大半を占めるようにレビー小体がありますが、分かるでしょうか?

鵜飼先生
鵜飼先生

大脳皮質にあるレビー小体は、黒質のレビー小体より、分かりにくい(見つけにくい)ことが特徴です。

 ハローもあまりはっきりしません。だから、大脳皮質のレビー小体は、レビー小体が黒質で初めて発見されてから、小阪先生が「大脳にもレビー小体が出現する」ことを報告するまで、なんと!60年以上もの間、世界中の誰も大脳皮質のレビー小体の存在に気が付かなかったわけです。

 しかし、一度気が付いてしまうと、今度は逆に、「なぜ今まで、これに気が付かなかったの?」と不思議に思えてしまいますね。でも、これと似たようなことは、日常生活でもよく経験しますよね。あることが分かってから、それを見つけるのは、簡単なのです。それが、人間の感覚です。

鵜飼先生
鵜飼先生

コロンブスの卵も同じような話です。

 この神経細胞の核(「目玉」のようなの)も、黒質での場合と同様に、レビー小体によって左上方に圧迫されてひしゃげています。

 スライド右側のイラスト写真は、小阪先生御自身の手によるレビー小体型認知症の第一症例の脳の切片の図です。

 上の大きな4つの切片が大脳の切片で、下の小さな3つは脳幹の切片です。よく見ると、大脳の切片の外周(大脳皮質に該当します)に小さなボツボツがいっぱい書かれています。それら一つ一つが、顕微鏡で観察されたレビー小体を表しています。こうして、レビー小体が脳のどこの領域に多く出現しているか、記録しているわけです。

 下の小さな3つの真ん中が、中脳の切片です。ここに黒質と呼ばれる神経核(神経細胞が密集している領域)があり、そこにも沢山のレビー小体が出現しています。

 正常人の黒質は、肉眼で黒く見えますが、パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者さんでは、薄くなってしまい、よく分からなくなります。これは、メラニンを含んだ黒質の神経細胞が死滅・消失することによるものです。

連載第3回はここまでとします。また、来週、お会いしましょう。

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連載 レビー小体型認知症を識る 番外編 — 異国日本で闘病中 —https://dlbsn.org/column/what-dlb/essay1.htmlSun, 06 Jul 2025 15:04:22 +0000https://dlbsn.org/?p=4088

番外編1 — 異国日本でDLB闘病中 —  横須賀米国第7艦隊を退役された現在71歳の方のエッセイです。DLBと昨年診断し、現在闘病中です。異国の地日本で、day serviceやその他の認知リハビリテーションの場もなく ... ]]>

番外編1

— 異国日本でDLB闘病中 —

 横須賀米国第7艦隊を退役された現在71歳の方のエッセイです。DLBと昨年診断し、現在闘病中です。異国の地日本で、day serviceやその他の認知リハビリテーションの場もなく困っています。

眞鍋先生
眞鍋先生

そんな彼に何とか認知リハビリテーションの場を提供したく、DLBSN東京のボランティアスタッフとして活動の場を提供し、今回はエッセーを書いてもらいました。

管理人
管理人

原文は末尾に掲載のとおり英語です。運営委員会にて翻訳させていただきました。

George James Smutny Jr.
生年月日1954年8月27日 イリノイ州シカゴ生まれ。イリノイ州立大学を卒業され、1911年創設の米海軍訓練施設nacval Training Center Great Lakesに入営。 以後、米第7艦隊第7潜水艦部隊や太平洋艦隊潜水部隊、米海軍横須賀ベース勤務等をされた退役海軍将校です。 茶道を奥様(日本人)と共に嗜みます。

 ジョージのエッセイ(日本語訳)
 レビー小体型認知症についてのエッセイ#2
(ジョージ・スマトニーさんとご家族による)

 診断を受けた当初から、正直に言って今でもレビー小体型認知症という診断にショックを受けています。私の医師も妻も、私と向き合い、支えてくれていることに感謝しています。

 私にとって大きな問題は、もう運転ができないことです。ゴルフを楽しみたいし、以前のように普通の生活を送りたいのに、「きっと大丈夫だから、頑張って」という言葉ばかりで、実際のところどうなのか分からないのです。「大丈夫」という言葉の本当の意味がよく分かりません。薬が本当に効いているのか、それとも単に次の段階に移るだけなのか…正直、確信が持てません。

 とはいえ、私は医師を信頼していますし、妻は本当に素晴らしく、私が現実から逸れないように支えてくれています。規則(社会のルール?下の文脈から)を守らせてくれる、まさに頼れる存在です。

 いつ、どこで、また普通の生活を送れるのか、まだ分かりません。私はこの病気のことを、友人はもちろん、妻にさえあまり話さずに、自分の中にとどめてきました。以前のような生活に戻れていない現実もあります。それでも、また運転できる日が来るのかどうか、今は正直分かりません。

 先ほども言ったように、妻も医師も最善を尽くしてくれていますが、時々、自分の人生から何かが削り取られていくように感じるのです。

 私の話に耳を傾けてくれて、ありがとうございます。きっとまた、元の生活に戻れる日が来ると信じています。

 これからこの病と向き合う方たちへ一つ言いたいのは、「あきらめずに頑張って、医師を信じて、流れに身を任せてください」ということです。

ジョージのエッセイ 英語原文[1]

column3_essay1_english

[1]このエッセイは、Mr.George御本人とご家族の了解を得て掲載しています。

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報告:愛知の活動-講演について解説2https://dlbsn.org/group/aichi/report/report20250523_2.htmlMon, 30 Jun 2025 12:15:39 +0000https://dlbsn.org/?p=4067

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Le ... ]]>

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)」に関する基礎知識を、筆者が講演した時に用いたスライドに沿って解説します。全部で10回ぐらいの連載になるかと思います。

(文責:鵜飼克行、レビー小体型認知症サポートネットワーク愛知〔DLBSN愛知〕顧問医、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

報告:第2回

スライドの全ページを見る(2025年5月23日 愛知・交流会報告)

鵜飼先生
鵜飼先生

前回は4枚目までを解説しました。5枚目から解説します。

5枚目解説

 仮説の段階ではありますが、このスライドの説明の通り、αシヌクレインという物質(たんぱく質の一種)の異常沈着が、レビー小体型認知症(DLB)の原因であります。

 このαシヌクレインという物質(たんぱく質の一種)の異常沈着が、DLBに伴ういろいろな臨床症状、例えば、認知機能低下パーキンソニズム(パーキンソン病と似た症状のこと)・自律神経障害(立ち眩み・失神・便秘・頻尿など)・精神症状(意欲低下・幻覚など)・その他の症状(レム睡眠行動障害・嗅覚障害・疼痛など)を引き起こすと思われます。

 なぜ、神経細胞にαシヌクレインの異常沈着が惹起されることがあるのか、その原因は分かっていません。つまり、DLBの根本の原因は不明です。ただし、遺伝性の原因ではないことは確かです。「親がDLBになったから、自分もいつかDLBになるのでは?」と心配する必要はありません

鵜飼先生
鵜飼先生

 DLBに伴ういろいろな臨床症状については、あとのスライドの時に詳しく説明します。

6枚目解説

鵜飼先生
鵜飼先生

わが師、

小阪憲司先生

です。

 私が小阪先生に初めてお会いしたのが四半世紀前で、(勝手に?)弟子になったのが16年前ですので、70歳前後のお写真でしょうか、見た目が実年齢以上に、とても若々しい先生でした。

 小阪先生は、エレベーターやエスカレーターを使われず、階段で上り下りされる習慣でしたので、高いビルや東京の地下鉄などでのお供は大変でした。このため、私も普段から、階段で訓練をしていました。その訓練は今でも続けています。

 右側の英語論文[1]が、記念すべきDLBの第一症例の報告論文(1976年)です。小阪先生が筆頭著者で、共著者にも日本が誇るビッグネームが綺羅星の如く並んでいます。この論文から、小阪先生の不滅の偉業の行進が始まったわけです。

連載第2回はここまでとします。また、来週、お会いしましょう。

[1] Kosaka K, Oyanagi S, Matsushita M, and Hori A. (1976). “Presenile dementia with Alzheimer-, Pick- and Lewy-body changes”.Acta Neuropathol36: 221-233.PMID 188300

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連載:医学における小阪憲司先生の功績とレビー小体型認知症の発見の歴史9https://dlbsn.org/dlb-history/no9.htmlSun, 22 Jun 2025 15:20:26 +0000https://dlbsn.org/?p=4044

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて ... ]]>

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

連載:第9回

パーキンソン病と認知症の関連についての論争(その1)

 レボドパ(L-dopa)の臨床応用が始まったのとほぼ同じ頃の1961年、米国マサチューセッツ州のボストンに留学していた岡崎春雄(敬称略)が、大脳皮質に多くのレビー小体(に類似した構造物)がある認知症の2症例を報告しました。岡崎先生は論文中で、「レビー小体(類似構造物)」を「Intracytoplasmic ganglionic inclusions(Lewy type)」と記しています。

 おそらく、岡崎先生ご自身は「これはレビー小体だろう」と、個人的には考えていたに違いないと思いますが、残念ながら、それを証明していません。そのためでしょうか、この論文はあまり注目を集めなかったようです。

 また、1975年に池田研二先生らも大脳皮質に多くのレビー小体を認めたパーキンソン病(PD)の症例を経験しましたが、論文として正式に発表されたのは、小阪先生の症例報告論文の発刊の後でした。

鵜飼先生
鵜飼先生

池田研二先生は、小阪先生と親しい先生です。レビー小体型認知症研究会が発刊した小阪憲司先生追悼記念誌にも御寄稿をいただきました

 そして、1976年、小阪憲司先生は、大脳皮質に多くのレビー小体を認める認知症の症例(第一症例)を英文で報告しました[1]。

小阪先生と池田研二先生の共著(筆者所有)[2]

2006年に小阪先生が主宰した「第4回レビー小体型認知症(DLB)国際ワークショップ in Yokohama」の後に、小阪先生は我が国の医師・医療・福祉関係者らからなる「レビー小体型認知症研究会(DLB研究会)」を創設して、2007年から毎年11月に横浜で学術総会を開催されるようになりました。

レビー小体型認知症研究会:日本で発見された認知症とは(他サイト)

レビー小体型認知症研究会は、DLBに興味を持つ日本全国の少数精鋭の臨床医・研究者(精神科医・脳神経内科医・神経病理研究者等)が集まって、活発な議論を重ねる研究会となっています。

連載第9回はここまでとします。第10回で、またお会いしましょう。

[1] Kosaka K, Oyanagi S, Matsushita M, and Hori A. (1976). “Presenile dementia with Alzheimer-, Pick- and Lewy-body changes”.Acta Neuropathol36: 221-233.PMID 188300

[2] 小阪憲司・池田研二 (1984). ウェルニッケ・コルサコフ脳症 (神経精神疾患モノグラフシリーズ) 、星和書店 .218ページ

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連載 レビー小体型認知症を識る 4https://dlbsn.org/column/what-dlb/no4.htmlSun, 15 Jun 2025 11:51:46 +0000https://dlbsn.org/?p=4013

 レビー小体型認知症の知識は専門家だけのものではありません。世間の人にも知ってほしい。これだけは知ってほしい1・2・3からはじめて、難しい専門のことまで説明していく予定です。(文責:眞鍋雄太、神奈川歯科大学臨床先端医学系 ... ]]>

 レビー小体型認知症の知識は専門家だけのものではありません。世間の人にも知ってほしい。これだけは知ってほしい1・2・3からはじめて、難しい専門のことまで説明していく予定です。(文責:眞鍋雄太、神奈川歯科大学臨床先端医学系認知症医科学分野 認知症・高齢者総合内科 教授)

第4回
— 改めて「認知症」を識る―「もの忘れ」の多様性 —

管理人アキノリ
管理人アキノリ

第3回までで認知症は病態名であることを教えていただきました。

眞鍋先生
眞鍋先生

はい。「もの忘れ」ですが、認知機能障害の構成要素ではあっても、「認知症」を規定する因子ではありません。

管理人アキノリ
管理人アキノリ

「認知症」を規定する因子ではないのですか?

眞鍋先生
眞鍋先生

つまり「もの忘れ」があっても問題なく社会生活を送っている方は大勢いらっしゃいますし、「もの忘れ」が「認知症」の規定因子ということであれば、ほとんどの高齢者が「認知症」患者ということになってしまいます。

管理人アキノリ
管理人アキノリ

なるほど。高齢者=「認知症」患者でないことは、もちろん理解できます。

眞鍋先生
眞鍋先生

第3回でも少し触れましたが、原因となる疾患ごとに脳の主たる障害部位は異なり、「認知症」の症状にも違いが見られます。

管理人アキノリ
管理人アキノリ

アルツハイマー病は、側頭葉の内側にある海馬・海馬傍回が主要な病変部位という前回の内容ですね!

眞鍋先生
眞鍋先生

そうです。当然のことながら、社会生活おける支障の内容(病像)も全く異なるわけです。

管理人アキノリ
管理人アキノリ

病変部位が違う。脳は部位ごとに異なる機能を担っているとは中学の理科でも習いました。だからこそ社会生活おける支障の内容も疾患によって変わるわけですね! なんだか理解できた気がします。

眞鍋先生
眞鍋先生

例えば前頭側頭葉変性症という疾患群に含まれる行動障害型前頭側頭型認知症(旧称ピック病)の場合、前頭葉および側頭葉が障害されることで自分の置かれた状況を理解出来ない、社会通念と自分がとる行動との整合性が判断出来ないといった症状を生じます。

管理人アキノリ
管理人アキノリ

万引きで逮捕された有名人が実は「ピック病」だったという話題は記憶に新しいです。ピック病は旧称なんですね、知りませんでした。

眞鍋先生
眞鍋先生

「もの忘れ」は目立ちません。行動障害型前頭側頭型認知症の患者さんは、場にそぐわない行動や反社会的行動を取ることで社会生活に支障を来す「認知症」ということになります。

第4回はここまでです。次回はいよいよ、レビー小体病の登場です。

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連載:医学における小阪憲司先生の功績とレビー小体型認知症の発見の歴史8https://dlbsn.org/dlb-history/no8.htmlSat, 14 Jun 2025 12:46:51 +0000https://dlbsn.org/?p=3990

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて ... ]]>

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

連載:第8回

レビー小体とパーキンソン病の関係(その4)

 1960年頃、神経薬理学の分野では、ドーパミンは単なるノルアドレナリンやアドレナリンの前駆物質ではなく神経伝達物質の一つであること、尾状核・被殻(両方合わせて「線条体」と呼びます。大脳基底核を構成する主要な神経核です)でのドーパミン濃度が高いこと、パーキンソン病(PD)患者では線条体(尾状核・被殻)でのドーパミン濃度が著しく低下していること、などの発見が相次ぎました。

鵜飼先生
鵜飼先生

中脳にある黒質の神経細胞は、ドーパミンを神経伝達物質として、線条体(尾状核や被殻)の神経細胞に連絡しています。

鵜飼先生
鵜飼先生

PDでは黒質の神経細胞が死滅・減少するため、黒質と連絡する尾状核や被殻でのドーパミンの濃度も減少します。

鵜飼先生
鵜飼先生

これにより、
パーキンソニズム
(パーキンソン症状)
が引き起こされると言われています。

図:黒質―線条体ドーパミン神経系の脳内分布[1]
鵜飼先生
鵜飼先生

【小ネタ】生体内では、L-ドパ(「レボドパ」とも言います)>>>ドーパミン>>>ノルアドレナリン>>>アドレナリンの順で合成されます。

鵜飼先生
鵜飼先生

【小ネタ】米国や日本の医療現場では、現在でもアドレナリンを「エピネフリン」と呼ぶことも多いのですが、欧州や日本での正式名称は「アドレナリン」です(生物学の分野でも、アドレナリンの呼称が一般的だそうです)。

鵜飼先生
鵜飼先生

【小ネタ】1900年に、高峰譲吉・上中啓三の二人が、アドレナリンの発見・抽出・結晶化に成功しました。これは、人類史上初のホルモンの抽出・結晶化でした。

 これらの発見により、PD患者の脳幹のレビー小体の詳しい分布、中脳黒質と大脳基底核との関連などが明らかとなり、レボドパの臨床応用も始まりました。その有効性は驚愕に値するものでした。パーキンソンによる最初のPD症例の報告から1世紀半後のことでした。

載第8回はここまでとします。第9回で、またお会いしましょう。

[1]科学技術振興機構報 第434号. “人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申)”. 科学技術振興機構. 2007‑10‑22. https://www.jst.go.jp/pr/info/info434/index.html, (accessed 2025‑06‑14).

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報告:愛知の活動-講演について解説1https://dlbsn.org/group/aichi/report/report20250523_1.htmlMon, 09 Jun 2025 17:30:39 +0000https://dlbsn.org/?p=3952

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Le ... ]]>

 2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)」に関する基礎知識を、筆者が講演した時に用いたスライドに沿って解説します。全部で10回ぐらいの連載になるかと思います。

(文責:鵜飼克行、レビー小体型認知症サポートネットワーク愛知〔DLBSN愛知〕顧問医、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

報告:第1回

スライドの全ページを見る(2025年5月23日 愛知・交流会報告)

ー1枚目解説ー

鵜飼先生
鵜飼先生

説明は不要ですね

ー2枚目解説ー

鵜飼先生
鵜飼先生

説明は不要ですね

ー3枚目解説ー

「レビー小体型認知症サポートネットワーク愛知(DLBSN愛知)」の(武漢コロナ感染症・パンデミック前の)交流会の風景です。

鵜飼先生
鵜飼先生

ワイワイやりました

 パンデミック前(2019年まで)は、主に当院(総合上飯田第一病院:名古屋市北区にある病床数236床〔精神科病床なし〕・6病棟制の中規模の総合病院)の入院病棟館(南館)の最上階の大会議室(ホール)で行っていました。しかし、当院は未だクラスター発生を警戒しており、南館への入館制限を実施継続中のため、入院関係者以外の一般の方の入館ができません。このため、今回、5年ぶりに、当法人(社会医療法人愛生会)の本部ビル(当院から徒歩1分)の会議室(南館ホールの5分の一ぐらいの広さ)にて、20名様限定で行いました。

次回のDLBSN愛知の交流会は、同じ場所で、2025年11月14日に開催します。ぜひご参加ください。

 なお、コロナのために、当科の認知症診療が、どのような影響を受けたのかについて、詳しく報告していますので、ご興味のある方は、下記論文1)を参照ください。

 「日本認知症予防学会ホームページ(他サイトへ)」から「会員ページ」をクリック(会員でなくても大丈夫です)、「学会誌」をクリック、「VOL10, No2, 2020年」のところにあります。学会誌のページ(他サイト)

1)鵜飼克行.(2020)新型コロナウイルス感染症のパンデミックは認知症診療をどう変えたか?-総合上飯田第一病院・老年精神科での経験-.日本認知症予防学会雑誌,10,28-32.

ー4枚目解説ー

鵜飼先生
鵜飼先生

生前の小阪憲司先生からお借りした「認知症の原因別の割合」を示したグラフです。

 私は有難いことに、小阪先生(故人)から「僕の講演スライドは、鵜飼君も講演で使っていいよ」とのお許しを得ています。

 アルツハイマー型認知症が最も多く、全体の50~60%を占めますが、次に多いのがレビー小体型認知症で、全体の15~20%を占めます(血管性認知症も15~20%です)。

鵜飼先生
鵜飼先生

したがって、レビー小体型認知症は「第2の認知症」とも呼ばれています。

鵜飼先生
鵜飼先生

今後は、レビー小体型認知症の割合は増加し、逆に血管性認知症は減る傾向になるだろうと思われます。最近は、脳血管性認知症ではなく、血管性認知症と呼ぶことが多いです。

 

第1回はここまでとします。また、来週、お会いしましょう。

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連載:医学における小阪憲司先生の功績とレビー小体型認知症の発見の歴史7https://dlbsn.org/dlb-history/no7.htmlMon, 02 Jun 2025 17:09:52 +0000https://dlbsn.org/?p=3933

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて ... ]]>

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

連載:第7回

レビー小体とパーキンソン病の関係(その3)

 1915年頃から1920年代にかけて、原因不明の脳炎が世界中で流行しました。この脳炎の最初の論文は、1917年のコンスタンチン・フォン・エコノモによる「Die Encephalitis lethargica:〔嗜眠性脳炎〕の意味です」で、このため「エコノモ脳炎」とも呼ばれました。

 このエコノモ脳炎の後遺症として、パーキンソニズム(パーキンソン病〔PD〕と類似する症状群のことです)が生じました。このパーキンソニズムは、脳炎の後遺症によるパーキンソニズムであり、PDのパーキンソニズムと似てはいますが、別の病態(病理学的な状態や機序)です。

 1953年に、PD患者では、黒質にレビー小体が必発し、パーキンソニズムと大きな関連があることが分かりました。

 1960年には、PD(「idiopathic paralysis agitans:特発性振戦麻痺」とも記載)患者には,脳幹の諸核と自律神経系にもレビー小体が多く分布することが明らかになりました。この「idiopathic paralysis agitans(=PD)」の「idiopathic(特発性)」とは,「エコノモ脳炎後のパーキンソニズムではない」の意味です。

 エコノモ脳炎(および後遺症)の原因は、現在でも不明ですが、おそらく何らかのウイルス性感染症(からの自己免疫性疾患)だったと推測されています。

 エコノモ脳炎の病変は、中脳だけでなく大脳基底核・視床下部にまで広く及んだため,パーキンソニズムや睡眠調節障害を惹起したと思われます。しかし、PDのように、レビー小体は認められませんでした。

鵜飼先生
鵜飼先生

 小阪先生は実際の臨床で,エコノモ脳炎後パーキンソニズムの患者を診たことがあったそうです。1980年頃までは,我が国にも存命の患者さんがみえたようですね。

左側から見た脳(中枢神経系)の絵図
左側から見た脳(中枢神経系)の絵図[1]

脳幹が大脳に突き刺さっている(連絡している)感じのイメージでOKです。

脳幹は、上方から、間脳・中脳・橋・延髄に分類されており、延髄の下方に脊髄が続いて伸びています(この絵図では切れています)。

小脳は、脳幹の側面後方に引っ付いている(連絡している)イメージでOKでしょう。

大脳と小脳は、直接には引っ付いていません(接していますが)。

黒質は、脳幹の中脳のなかにある神経核(神経細胞が密集している部位)の一つです。

大脳・小脳・脳幹・脊髄を、まとめて「中枢神経(系)」と呼んでいます。

連載第7回はここまでとします。第8回で、またお会いしましょう。

[1]側面から見たヒトの脳の構造(『グレイの解剖学』から引用)Commons:ライセンシングに準拠して掲載しています。Wikipedia[Brain diagram ja.svg]

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2025年5月愛知交流会の報告https://dlbsn.org/area/aichi/report_aichi_202505.htmlSat, 31 May 2025 09:38:45 +0000https://dlbsn.org/?p=3889愛知のページへ戻る

2025年5月23日鵜飼先生講演スライドPDF(25ページ 2.0Mb)

当スライドの解説を連載で掲載しています。>>>こちら(当サイト内)

↓スライド下方でページを変えられます。表示されない場合は上のダウンロード用PDFをご覧ください。スライドの著作権は鵜飼先生にございます。承諾なしの引用、配布等はひかえてください。
report_aichi_202505

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当スライドの解説を連載で掲載しています。>>>こちら(当サイト内)

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2025年6月29日東京交流会~開催のお知らせhttps://dlbsn.org/group/tokyo/event20250629.htmlThu, 29 May 2025 23:24:43 +0000https://dlbsn.org/?p=3834東京のページへ戻る

2024年6月29日東京交流会パンフレット-ダウンロード用PDF(A4・2ページ 0.9Mb)

↓2ページのパンフレットが表示されない、印刷する場合は上のダウンロード用PDFをお使いください。日時はメールにてお問い合わせください(詳細はパンフレットに記載)。
event_tokyo_20250629

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