レビー小体型認知症の知識は専門家だけのものではありません。世間の人にも知ってほしい。これだけは知ってほしい1・2・3からはじめて、難しい専門のことまで説明していく予定です。(文責:眞鍋雄太、神奈川歯科大学臨床先端医学系認知症医科学分野 認知症・高齢者総合内科 教授)
第4回
— 改めて「認知症」を識る―「もの忘れ」の多様性 —

第3回までで認知症は病態名であることを教えていただきました。

はい。「もの忘れ」ですが、認知機能障害の構成要素ではあっても、「認知症」を規定する因子ではありません。

「認知症」を規定する因子ではないのですか?

つまり「もの忘れ」があっても問題なく社会生活を送っている方は大勢いらっしゃいますし、「もの忘れ」が「認知症」の規定因子ということであれば、ほとんどの高齢者が「認知症」患者ということになってしまいます。

なるほど。高齢者=「認知症」患者でないことは、もちろん理解できます。

第3回でも少し触れましたが、原因となる疾患ごとに脳の主たる障害部位は異なり、「認知症」の症状にも違いが見られます。

アルツハイマー病は、側頭葉の内側にある海馬・海馬傍回が主要な病変部位という前回の内容ですね!

そうです。当然のことながら、社会生活おける支障の内容(病像)も全く異なるわけです。

病変部位が違う。脳は部位ごとに異なる機能を担っているとは中学の理科でも習いました。だからこそ社会生活おける支障の内容も疾患によって変わるわけですね! なんだか理解できた気がします。

例えば前頭側頭葉変性症という疾患群に含まれる行動障害型前頭側頭型認知症(旧称ピック病)の場合、前頭葉および側頭葉が障害されることで自分の置かれた状況を理解出来ない、社会通念と自分がとる行動との整合性が判断出来ないといった症状を生じます。

万引きで逮捕された有名人が実は「ピック病」だったという話題は記憶に新しいです。ピック病は旧称なんですね、知りませんでした。

「もの忘れ」は目立ちません。行動障害型前頭側頭型認知症の患者さんは、場にそぐわない行動や反社会的行動を取ることで社会生活に支障を来す「認知症」ということになります。
第4回はここまでです。次回はいよいよ、レビー小体病の登場です。