2025年5月23日金曜日、社会医療法人愛生会本部会議室においてDLBSN愛知エリアの交流会が開かれました。故小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)が発見し・確立した「レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)」に関する基礎知識を、筆者が講演した時に用いたスライドに沿って解説します。全部で10回ぐらいの連載になるかと思います。
(文責:鵜飼克行、レビー小体型認知症サポートネットワーク愛知〔DLBSN愛知〕顧問医、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)
報告:第6回
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前回は9枚目前編を解説しました。今回は10枚目を解説します。
–10枚目解説–
レビー小体型認知症(DLB)に見られる幻覚のうち、最も頻度の高い幻視の特徴についてから解説を始めます。
DLBの幻視には、さまざまな種類があります。「知らない人が椅子に座っている」「子供たちが部屋の中を走り廻っている」「たくさんの人がグループでハイキングをしている」「小さな動物が動き回っている」「壁に小さな虫がたくさんいる」「猫が布団に入ってきた」「部屋の中にいろいろな色の花が咲いて風に揺れている」「人形が動き回っている」「机が燃えている」「床に水が流れている」など、人・動物・虫・植物・火・水などの幻視は定番です。
その他にも、例えば、「クレーン車が部屋に突っ込んできて、死ぬかと思った」「大きな虎が歩いていて、怖くて布団に隠れた」「道路のあちこちで、爆発が起きていた」「泥棒が木刀を持って入ってきた」「大きな蛇がうねうねしていた」「電信柱に死体がぶら下がっていた」「ご飯の中に腐った大きな骨が入っていた」など、怖くて嫌な幻視もあります。
小さなものから大きなものまで、色の無いものからカラフルなものまで、動かないものからよく動くものまで、実際のものから架空(想像上)のものまで、楽しいものから怖いものまで、人によって見える幻視はさまざまで、とても個性的です。
筆者は幻視に興味があり、いろいろな幻視の話を患者さんから聞き出して、ついつい診察時間が長くなってしまうので、一緒に診察に就いてくれているナース(看護師さん)は、いらいらしながら・呆れています。
私がこれまでで、一番印象的な幻視の話は、「皆の服に大きな穴が開いていて、服の中が見える」という高齢女性の患者さんの幻視でしょうか。
その時の診察場面を再現してみましょうか。私(医師)と患者さんとの対話です。

「服に穴が開いていて、その中が見えるの?」
「そうです」

「それは面白い幻(まぼろし)だね、実際には穴は開いてないでしょ?」
「そうですね、触っても、穴は無いので」

「穴が無くなるの? 消えちゃうわけ?」
「そう。触ろうとすると無くなっちゃう」

「なるほど、じゃあ、あの看護婦さんの服にも、穴は開いてますか?」
「はい、いくつも開いています」

「そうなの!? じゃあ、中が見える?」
「・・はい」
「下着とかが見えるの?」
「・・下着も見えるし、肌も見えます」

「へえええ、凄いね、透視術みたいだね。じゃあさあ、あの看護婦さんのハンカチの色は何色?」
「・・◎◎色・・」
A看護師:「ちょっと、先生、止めてください!」

「あのさあ、幻視の話なんだから・・・もしかして、当たってるの?」
A看護師:「・・もう、私のことはいいですから、次の診察に行ってもらえませんか」
こんな感じで、医師と患者さんだけでなく、患者の家族やナースも一緒に、診察をしています。
連載第6回はここまでとします。また、来週、お会いしましょう。