連載:医学における小阪憲司先生の功績とレビー小体型認知症の発見の歴史17

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

連載:第17回

DLBDに関する国際ワークショップの開催(その3)

 同年(2006年)、小阪先生らは小規模な臨床研究を実施して、ドネペジルのレビー小体型認知症(DLB)に対する有効性を報告しました。

 また、同じ年(2006年)に、池田学先生(大阪大学大学院精神医学教授、レビー小体型認知症研究会代表世話人)も、ドネペジルの認知障害と認知症の行動心理症状(BPSD)に対する有効性について報告しました。

 さらに翌2007年から、小阪先生を中心として、ドネペジルの国内臨床治験が開始されました。その後は紆余曲折を経ながらも、小阪先生・池田先生・森悦朗先生が主導した国内臨床治験において、DLBに対するドネペジルの有効性が証明されて、2014年にドネペジルは世界初の「DLB治療薬」として承認されるに至りました。

小阪先生(中央)・池田先生・森先生が揃った写真
鵜飼先生
鵜飼先生

真ん中が小阪先生、左(向かって右)が池田先生、右が森先生です。

 この頃すでに、小阪先生は、アセチルコリン系の起始核であり、大脳皮質への投射源であるマイネルト基底核が、アルツハイマー病(AD)よりもDLBで、よりシビア(高度)に障害されることを発見していました。

鵜飼先生
鵜飼先生

このため、小阪先生は「ドネペジルはADよりもDLBで、より著効するはずだ」と予言していましたが、「あの当時には、誰にも相手にしてもらえなかった」と苦笑されていました。

 なお、2006年には、小阪先生と藤城弘樹先生(小阪先生の弟子、名古屋大学特任教授、筆者よりかなり若い後輩です)らは、コリン作動系脳神経核として、マイネルト基底核とともに代表的な中隔核(海馬領域への投射)でも、ADよりDLBでの神経細胞脱落がより激しいことを報告しています。

 もう少し専門的になりますが、ドネペジルの有効性は用量依存的です。

用量依存的 >>> イミダス・集英社他サイト こちらはサイト運営委員会が参考までに追加しました)

 DLBに対して、基本的には10㎎/日の使用が推奨されています。が、筆者の意見ですが、ドネペジル5㎎/日で、日常生活動作(ADL)の改善が得られて・不満の無い生活が得られる場合には、敢えて10㎎に増量する必要はないと思います。

 ドネペジル5㎎/日で、認知機能や幻視などのBPSDが悪化・再燃した場合、その時点で10㎎/日に増やせば、さらに効果が出ることを、小阪先生と筆者らは2015年に臨床報告しています。

 さらに蛇足的ですが、ドネペジルの最高用量は,我が国では10㎎/日です(10㎎/日以上は使用不可能)。一方,米国やお隣の国(韓国)では,(ADに対して)23㎎/日まで使用可能になっています。筆者は日々のDLBの臨床で,「もしも、我が国でも23㎎/日まで使用できたら・・・」と、とても悔しい気持ちになります。

 ドネペジルは「パーキンソニズムを悪化させる」「易怒を生じやすい」と言われることもあります。しかし、DLBの臨床で、問題となることはほとんどありません。

 もしも仮に、何らかのパーキンソニズムが生じたら、その時点で減量か、レボドパ(パーキンソン症状の最も重要な薬)の増量をすればいいと思いますし、スルピリドなどの副作用であるoral dyskinesia(口唇や舌がグニャグニャ動く不随意運動)のように、長期にわたる薬剤性後遺症にもなりません。

 また筆者は、DLB患者にドネペジルを投与して、「易怒が生じた」というような経験は、一度もありません。もしも、DLBと診断した患者に、ドネペジルを投与して易怒的になったのなら、その際には「誤診しているのでは?」と疑うべきだと思います。

 連載第17回はここまでとします。第18回で、またお会いしましょう。