レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)
連載:第13回
「レビー小体病」「びまん性レビー小体病」概念の提出(その2)
ドイツ留学から帰国した小阪先生は、1980年に自験20剖検例に基づいて「レビー小体病(Lewy body disease:LBD)」の概念を提唱しました。
この論文の中で、小阪先生はLBDを3つの型に分類しました。①びまん型、②移行型、③脳幹型、の3型です。
注 : 1996年に小阪先生は、LBDの4つ目の型として「④大脳型」を追加しています。びまん型LBDと大脳型LBDの違いは、また別の機会に説明することにします。
米国の研究者らは、「パーキンソン病患者に認知症が発症する原因は、アルツハイマー病が合併するため」と主張していましたが、それに対して、小阪先生は「新しい認知症性疾患の発見」を確信していました。
1984年、小阪先生は自験剖検12例を基に、新しい認知症性疾患として「びまん性レビー小体病(diffuse Lewy body disease:DLBD)」の名称を提唱しました。小阪先生の、この「DLBD論文」が発表されて、1985年以降には欧米でも同様の報告が多く発表されるようになりました。

LBDとDLBは、どう異なり、どこが同じなのか、分かりにくいと思いますので、少し説明します。
LBDとは、多数のレビー小体が出現して、その臨床症状の原因となっていると思われる疾患の総称です。つまり、レビー小体の存在がその疾患の主徴となっている疾患群を意味します。「認知症ではないLBD」というケースもあります。
パーキンソン病(PD)は、レビー小体が主に脳幹の中脳黒質に出現しますので、脳幹型LBDに該当することになります(早期の段階であれば認知障害は認めないことが多い)。
びまん性レビー小体病(DLBD)は、レビー小体が脳幹にも・大脳辺縁系にも・大脳皮質にも、びまん性に出現しているタイプで、びまん型LBDに該当し、このタイプは認知障害をきたすので、これがのちに、国際的に「レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)」と命名されたと考えてください。
ちなみに、PDでは、脳幹型LBDから移行型を経て、最終的にびまん型LBDに至ると、認知障害が生じて、パーキンソン病認知症(PDD)になります。こうなると、もはや病理像ではDLB(=DLBD)と区別できなくなります(つまり、両者は同じ疾患と言えます)。

注3:LBDを一つの疾患と考えて、PD・PDD・DLBはLBDの亜型であると解釈してもいいと思います。つまり、レビー小体が主に(最初に)どこから発生してくるかによって、LBDの症例を、PDやDLBなどに亜分類しているという考え方です。
要するに、PDも・DLBも・PDDも、すべて同じLBDという疾患であり、レビー小体が主に(最初に)どこから発生するか・どの程度まで広がったかによって、呼び方を変えているだけと考えるわけです。

「レビー小体がある疾患の総称」「レビー小体病という一つの病気」、このどっちの考え方でも、そう変わらない気もしますが、小阪先生は「レビー小体病という一つの病気」という考え方だったと思います。よって、小阪先生の弟子である我々の仲間内では、こう考える人々が主流だと思います。
注:失神(起立性低血圧や神経反射性)を主症状として発症するLBDも存在します(初めの頃には認知障害はありません)。このタイプのLBDは、自律神経系が主に(最初に)障害されると考えられ、純粋自律神経不全症(pure autonomic failure:PAF)に分類されます。病理解剖して調べないと分かりませんが、おそらく、自律神経系にレビー小体が多数出現している(黒質や大脳には少ない)のだろうと思われます。この病理が証明されれば、新たに「自律神経型LBD」という「第5の型」になるかもしれません(大脳型が「第4の型」であることは、前述しました)。
連載第13回はここまでとします。第14回で、またお会いしましょう。
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