連載:医学における小阪憲司先生の功績とレビー小体型認知症の発見の歴史5

 レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)

連載:第5回

レビー小体とパーキンソン病の関係(その1)

 パーキンソン病(PD)患者のマイネルト基底核と迷走神経背側核の神経細胞内に、レビーがエオジン陽性の特徴的な封入体を発見した、その7年後の1919年、ロシア帝国生まれ(現ウズベキスタン)の神経病理学者コンスタンチン・トレティアコフが、PDではこの封入体が脳幹黒質にも多数出現することを報告して、これを「corps de Lewy(フランス語で〔レビー小体〕の意味」と命名しました。

図1:レビーがスケッチした色々な形態の神経細胞内の封入体[1]

生前の小阪先生より、「レビーのスケッチにはほぼ全てのレビー関連病理が記載されている」と聞いており、このスケッチについてもっと聞いておけばよかったと思います。(管理人追記)

レビー小体は当サイトのロゴにあるように丸い形で紹介されますが、スライドのため薄く切るから丸くなることが多いだけでいろんな形をしています。(管理人追記)

 中央やや左寄りの三角形様の細胞がニューロン(神経細胞)です。

 黒茶色の細かい粒粒はメラニンで、このために黒質は肉眼では黒く見えます。

 神経細胞の中のハロー(光輪)に囲まれたピンク色の球体がレビー小体です。

図2:黒質(脳幹にある神経核の一つ)の神経細胞のレビー小体
[2]

 よく見ると、大きなレビー小体の上方にも小さなレビー小体があるようで、雪だるまみたいになっていますね。

 レビー小体に圧迫されて、本来は中央にあるはずの神経細胞の核(この場合の「核」は、神経細胞の密集域〔神経核〕のことではなく、神経細胞内にある「ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじ」の目玉のような構造物のことです)が、右側に潰されています。

連載第5回はここまでとします。また、来週、お会いしましょう。

[1] ドイツの書籍から 小阪憲司遺品から親族提供

[2] 小阪憲司 生前に使用していたスライド資料などから親族提供