レビー小体型認知症(DLB)を発見したのは、小阪憲司先生(2023年3月16日ご逝去)です。この連載コラムでは、小阪憲司先生の業績を中心に、DLB診療の進歩について、医療・医学に詳しくない方でも理解しやすいように努めて記述していきたいと思います。(文責:鵜飼克行、総合上飯田第一病院・老年精神科・部長)
連載:第9回
パーキンソン病と認知症の関連についての論争(その1)
レボドパ(L-dopa)の臨床応用が始まったのとほぼ同じ頃の1961年、米国マサチューセッツ州のボストンに留学していた岡崎春雄(敬称略)が、大脳皮質に多くのレビー小体(に類似した構造物)がある認知症の2症例を報告しました。岡崎先生は論文中で、「レビー小体(類似構造物)」を「Intracytoplasmic ganglionic inclusions(Lewy type)」と記しています。
おそらく、岡崎先生ご自身は「これはレビー小体だろう」と、個人的には考えていたに違いないと思いますが、残念ながら、それを証明していません。そのためでしょうか、この論文はあまり注目を集めなかったようです。
また、1975年に池田研二先生らも大脳皮質に多くのレビー小体を認めたパーキンソン病(PD)の症例を経験しましたが、論文として正式に発表されたのは、小阪先生の症例報告論文の発刊の後でした。

池田研二先生は、小阪先生と親しい先生です。レビー小体型認知症研究会が発刊した小阪憲司先生追悼記念誌にも御寄稿をいただきました
そして、1976年、小阪憲司先生は、大脳皮質に多くのレビー小体を認める認知症の症例(第一症例)を英文で報告しました[1]。

2006年に小阪先生が主宰した「第4回レビー小体型認知症(DLB)国際ワークショップ in Yokohama」の後に、小阪先生は我が国の医師・医療・福祉関係者らからなる「レビー小体型認知症研究会(DLB研究会)」を創設して、2007年から毎年11月に横浜で学術総会を開催されるようになりました。
レビー小体型認知症研究会は、DLBに興味を持つ日本全国の少数精鋭の臨床医・研究者(精神科医・脳神経内科医・神経病理研究者等)が集まって、活発な議論を重ねる研究会となっています。
連載第9回はここまでとします。第10回で、またお会いしましょう。
[1] Kosaka K, Oyanagi S, Matsushita M, and Hori A. (1976). “Presenile dementia with Alzheimer-, Pick- and Lewy-body changes”.Acta Neuropathol36: 221-233.PMID 188300
[2] 小阪憲司・池田研二 (1984). ウェルニッケ・コルサコフ脳症 (神経精神疾患モノグラフシリーズ) 、星和書店 .218ページ